昔のことですが、お客様からご相談があり、ご両親との二世帯住宅のご依頼をお受けしました。ただし、大きな課題があり、それは別居されているご両親にともに新しい家にお住まいただけるようにすることでした。
新しい暮らしのプランに、ご自分達ご家族と高齢のご両親のお幸せも加えて設計が進められました。
家相とは家の間取りや方位などから、家に「吉相」「凶相」があるとする、中国で生まれた「風水」が日本で独自の発展をした考え方です。
家相鑑定に用いる家相盤とは
この家相の説明は依代(よりしろ)とする様々な流派により異なっているのが実情です。実はお客様のご両親がそれぞれ頼みとされる「家相」教科書が異なっており、このままでは家が建てられなくなるのでなんとかしてほしいとの相談がありました。
「田村さんなら」とのご指名でした。考えた上でこれはもう家相の専門家にお願いすることにしました。
たまたま、知る人ぞ知るK様は、当時勤めていたS建設で家を建てられていましたのでご相談したところ、快くお引き受けくださいました。
事前に事の経緯をお話して、できれば2つあるプランのうちの、こちらをおすすめくださいとご相談しました。
親孝行な若夫婦の願いをぜひとも実現してほしいとお願いしました。
パナソニックの創始者 松下幸之助氏は社員の採用にあたり、この質問をされたようです。
「あなたは、運の良い方だと思っていますか?それとも運の悪い方だと思っていますか?」
そうして「運の良い方だと思う」と答えた人を出来るだけ採用されたとのこと。
未来に夢を持てるだけで、人は元気になれるものです。
家づくりでも「運のいい家」があるとすれば、それはもう「運の悪い家」より運のいい家のほうが良いに決まっています。
運命の日はすぐに来ました。
高齢のご両親は、別居の原因は、お互いに頑固な方だったからのようでした。
今回ようやく和解の家づくりが進んでいたのですが、それぞれご自分の信奉する「家相本」に書かれた記述にこだわり、合意形成に至っておらず、残念な状況となっていました。
家相の先生Kさんの第一声、今でも耳に残っています。Kさんは2枚の設計図を見たあと、
「いいですか、家は中に住む人の心がけで、良くも悪くもなります。」
よくぞ言ってくださいましたと、見る間に相談者は柔和な笑顔になられました。
「さあ、その心がけができたらそうですね、私はこちらの設計をおすすめします。」
と事前にお願いしておいた方を指さされました。「わかりました。」とお二人はすぐに納得されプランは決定しました。2人共、早く和解したかったようでした。
家も完成したある日、工事関係者の数人を招いて新築祝いが開催されました。若いご夫婦、年老いたご両親、そしておむつを付けた元気なお孫さん。三世代の笑顔が忘れられません。
宴もたけなわ、男の子は当時の設計には必ずあった「縁側」をおむつを付けてよちよち歩いていました。ふと気がつくと、新築の桧の縁側に大きな「うんこ」が!!
皆が「あっ!」といったところ、若主人はすかさず、
「いいウンが付きました!」
と言われ、大きな笑いが・・・忘れられない思い出です。