法師蝉 お前の故郷は いずくにか
忙しく働いていて、季節の移り変わりに気付く時があります。
ようやく暑い夏が過ぎた晩夏の夕べ、忙中閑ありの言葉通り、ふと法師蝉の鳴くを聞いて、
「アッ、この声は」
となった次第。
人生の過ぎさりし彼方から響く、懐かしく、どこかもの悲しい、つくつく法師の声に、今に繋がる時の流れを一瞬垣間見る。
子供の頃谷川の魚を追って遊んでいた時、ふと水中から顔を上げるとつくつく法師が鳴いていた。あの時の「今」につながる。
何も変わらぬ孤独な自分という存在に気付かさせてくれる蝉の声。
「ツクツクボーシ、ツクボーシ、
ツクツクボーシ…」
何を感傷的な事書いているのか?
それは、全館空調(高断熱・高気密)のマッハシステムの事務所で、トリプルサッシの硝子越しに響く、法師蝉独特のフレーズが「かすか」に聞こえて来たことからこの一文を書くことになったという訳です。
私の事務所での居場所は、玄関に近く、玄関サッシは予算の関係もありペア硝子。出入りする人も多く開閉の度に外からの音も部屋まで届きます。そろそろ退社の時間も近くなって、一日の疲れを感じていたところ、ふと耳にした法師蝉。小さな幽かに聞こえた秋の声。マッハシステムに関わって早や10年以上過ぎています。というわけで、冒頭の一句、少しは味わい深く観賞頂けましたでしょうか。
ツクツクボーシ、ツクボーシ
ツクツクボーシ…
法師蝉 お前の故郷は いずくにか