午前11時に下がる冷房エネルギー
次のデータをご覧頂きたい。晴天の夏8月・9月午前11時になると決まって、冷房用のエアコンの消費エネルギーが下がる。
11時になると、太陽が家の真上に来るので、屋根だけに日が当たることになる。日射による熱の影響が少なくなる瞬間である。夏の猛暑、晴天であっても外からの熱の影響が「太陽」によるものであることを示す指標とも言える。
セントラルヒーティングの課題
昔、「セントラルヒーティング」という言葉があった。エネルギーコストの安い、富める国アメリカでは、大量の油で、暖房を行ない、寒さを払拭。炬燵、手焙りで寒さを忍んでいた日本人には手の届かない贅沢な暖房方法でした。
断熱性能向上で暖房コストを下げる
家造りの技術が進化し、断熱性能がアップすると、事実上エアコン1台でエネルギー的には事足りるようになり、エネルギーコストを低減できるようになって、今日の全館空調ブームが到来しました。
今日の全館空調は、断熱の鎧と「小さな心臓」
断熱の鎧(よろい)に守られた住まいの中で1台のエアコンが実現する快適温湿度空調は、あまりにも小さなエアコンで事実上の経済メリットを強調することでビジネスチャンスを招来することになりました。たった14帖タイプの機器で70帖の部屋の温湿度をコントロールすることとなります。小さな心臓とも言えるエアコンを上手に使わねばなりません。
よって、仮に東西に大開口のガラス窓があると、朝日、夕日がほぼ直角に入射します。太陽の熱は1㎡当り1kwの熱エネルギーがありますので、高さが2,400、幅2,700の掃き出しサッシだと6.48㎡の広さがあり、約6.5kwの熱が射し込むこととなります。暖房エネルギーは大まかですが、6.5kwのエアコンが働いていることになり、冷房のために室内設置のエアコンは4kwなので効果を期待できないことになります。
夏は上手に日射遮蔽
午前中は東側の窓に、シャッターや、外付けブラインドで日射遮蔽を行ない、太陽が西に移動する12時以降に開ける。西側の窓は午後はシャッター、外付ブラインドで日射遮蔽することで小さな心臓とも言える可憐な4kw程度のエアコン1台で40坪程度の家(80帖の広さ)でも快適な温湿度環境が実現できることになります。
①東の朝日が真横から照るので早朝Ⓒのシャッターを下ろす。
②太陽の高度が上がり、Ⓐ庇(ひさし)の効果が出るとシャッターを上げてⒷを下ろす。夏の輻射熱対策。
③太陽が西に傾くころにⒷのスクリーンも上げる。
外のエアコン室外機にも日射遮蔽
小さな心臓を守る 〈大風量小温度差空調が現実的〉
そこで、クリーン・ヘルス・エア・システムの特許が「大風量小温度差空調」ですが、これは絶えず温度差の少ない、+1℃~+2℃、又は-1℃~-2℃程度の調温された空気を、しかも大量に流すことで冷暖房しますが、これはまるで空気を入れ替える発想とも言えるもので、ヒートショックのない快適、温湿度空間に各部屋の環境を導くことが可能となる優れた工法と言えます。
小風量、大温度差空調では、成し得ないスムーズな温湿度の平準化が大風量により実現できることになるのです。
温度変化要因
① 測定点の時間軸の変化原因
(2度以上は改善できます。)
1日の外気温度の変化に対応して室内の温度に変化が2℃以上ある場合、以下の要因が考えられる。
1. 断熱性能が悪い(部屋毎の性能のバラツキ)
2. 日射取得による影響(窓の有る無し、大小が関係します)
3. 気密性能が低い
4. 調温用の空気の供給量が少ない
② 部屋間の同時測定による温度が、2℃以上の差がある場合
イ) 調温用の供給空気の湿度にバラつきアリ
ロ) 調温用空気量が対象とする部屋の容積に対して多寡あり
ハ) 部屋毎の窓量に多寡あり
ニ) 部屋の位置による日射や日影の影響あり
ホ) 部屋毎の断熱方法に問題あり
湿度変化要因
全館空調の場合、空気中に含まれている水蒸気量は、ほぼ同一であると予測されます。なぜなら、流れる空気は循環状態にあると想定されるからです。
一方、室温は断熱状態の差や、暖冷房用のエアコンの供給空気量で変化する為、相対湿度が上下します。室温の低い所は湿度は高く、室温の高い所は湿度が低くなります。
故に、全体で60%以上の部屋が出ないように、もっとも湿度の高い部屋を60%以下の湿度に下げる必要があります。
尚、温度差も少なくすることで均一な温湿度環境が実現できます。
湿度調整は再熱ドライのエアコンで!
全館空調のベースが高断熱、高気密、低負荷エアコンで構成されることになると、エアコンの選択が重要です。何故なら夏場の高温に対処する為には冷房による室温の低下と、相対湿度の関係で、温度低下で上がる相対温度に見合った水蒸気を取り除く必要があるのです。
湿度調整は再熱ドライ機能で
エアコンの機能の中で冷房・除湿・再熱ドライの大まかにこの3種が設定されています。
省エネの観点から、再熱ドライ方式は冷え過ぎを予防するため、冷え過ぎた空気を加熱して室内に空気を戻すことでエネルギー消費が多くなります。
但し、梅雨時、夏場の高温多湿の時期には、換気で大量の湿気が室内に流入しますので、連続して除湿を行う必要があります。冷え過ぎや、除湿不足を防ぐには再熱ドライが最適です。
全館空調「24時間」で前提に変化
- 1.家が高断熱・高気密化、低負荷エアコンによる、室温コントロールが可能となったこと。
- 2.「24時間」の全館空調となり、換気による、冬は乾燥、夏は多湿の湿度条件が加湿やエアコンの機能選択によって快・不快が生じる。
- 1.は先に述べたように日射取得のコントロールや、生活時の内部発熱等を考に入れた、パッシブなエアコン運用が大前提となっています。
- 2.は冬期の乾燥時エアコン利用による暖房では、温度上昇で必然的に相対湿度が下がってしまう為、加湿が必要となります。
24時間の加湿は気化式の加湿器が電気代がかかりません。
又、夏期の高温多湿時には、24時間連続除湿が必要となります。
同じ温度でも湿度が10%低いと、体感温度が1℃下がると言われています。
2台エアコンの奨め
全館空調をシステム全体で1台の万能エアコンのように考える方がおられますが、それは誤りです。
冷暖房の負荷を1台のエアコンで増減させるだけで家の温熱環境をコントロールできると考えることは幻想なのです。
家の断熱性能と日射の影響が全館空調効果を左右します。よって、パッシブな自然エネルギー(太陽熱取得や日射遮蔽)空調が人に優しい温湿度環境を実現してくれることになるのです。
エアコン1台で全館空調は営業トークと心得よ!
全館空調では、エアコン1台のアピールでいかにも経済的なように伝橎されているが、快適性の面からは2台エアコンをお勧めしたい。
酷暑、厳寒時は併用した方がエアコンの効果を得やすい。
夏場、1台をリビングに設置することで気流による涼を得ることが快適感を高める効果となる。むろん、空調室のメインエアコンの消費エネルギーは、その分軽減されることになる。
更に、一方の故障時には残りの一台で冷暖房を行なえる為、酷暑時、厳寒時のリスクを軽減できることになる。
2台エアコンは秋、春時の中間期の快適に〇
中間期には暑さ寒さが1日で入れ替わることもある。冷房、暖房、時には雨が降れば除湿とエアコンによる室内環境コントロールが目まぐるしく変わることになる。
この時こそ、メインエアコンを止めて、リビングエアコンでその時、その時の快適をコントロールすることが、運用上の簡便さで分かりやすい使い方が可能となるようである。