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無知は至福

 私達日本人は、住生活を快適に暮らすために、様々な工夫をして来た。冬になると、寒さを克服する為に、炬燵、湯たんぽ、そうして今日では、部屋の何処にいても温風が人を追いかけてくる赤外線センサー付の高性能エアコンまで、その日進月歩はめまぐるしい限りである。
 ところが、である。この断熱材の進歩や施工方法の革進により家造り事体が劇的に変化して、住まいの常識が大きく変わることとなった。
 各部屋毎にエアコンを設置して、パートタイムに冷暖房を行う方式から一台(14畳タイプ)のエアコンで家1棟丸ごと冷・暖房が可能となったのはこれまでにない高断熱の家造りが確立されたからです。
 「無知は至福」という言葉があります。知らない内はこの上なく幸せだったという意味です。ということは、「知ることで不幸」になったという裏事情を示す言葉でもあるようです。そんな家造りのお話をご紹介致します。
 本件の登場人物は、全館冷暖房マッハ空調の開発者であり、会長でもある廣石氏となります。
 氏は10年程前にマッハ空調で新築住宅を建て、住み続けて来ました。さすがに、技術の進歩もあり、この度改築を計画されました。

さっしのせいのう1

 廣石氏が改築に当り住宅の温熱環境の性能アップの為に窓に注目した理由は、先の図表をご覧いただくことで明確です。
 先ず、夏場、窓から家全体の熱の内、約70%もの量が、暑さとして室内に入って来ること。
 次いで、冬場、約50%もの熱が室内から外へ出てゆくことを考えてのことでした。

sassi b2-1

 廣石氏は、更に、省エネと省コストを両立させる、妙案として、後付け工事が容易でコストも少なくて済む、樹脂製のペア硝子、インナーサッシを取り付けたのでした。硝子と硝子の間にはアルゴンガスや空気が、重ね蒲団のように断熱性能を向上させています。樹脂のペア・インナーサッシを足し算することで、トリプルよりも更に一層多い空気層が生まれ高い断熱環境を実現してくれることになったのでした。
 ところが、である。再び。

壁の断熱性能も薄かった!

 このインナーサッシの追加工事の恩恵として、室外からの騒音を遮断する事にも効果がある為、室内側の静粛性がアップしました。
 それは、「これ程も」と言わんばかりの効果で、耳の中で、シーンと体液の流れを感知出来る程とも言えました。ところがしばらくすると、何やら車の騒音らしき響きが耳につくのでした。その音はしっかり、以前に比べると低減されてはいるのですが、聞こえてくるのです。
 音は窓からではなく、なんと「壁」からしっかりと伝播していました。と云うことで、しかもだんだん耳が慣れると、敏感になった聴覚に、聴き取れる音の範囲が広がってくるのでした。
 廣石氏は、「卒然として覚(さとる)」、窓だけではなく、断熱材も薄かったということに。
 そもそも、建築当初の壁の断熱材の薄さや、施工精度の改善を抜本的にやり直すことをしない限り、住宅の、廣石氏(少なくとも、最先端の住まいの温熱環境クリエーター)が満足する改築は出来ないということです。

知るは喜びなり

 「無知は至福」の裏事情は、「知り得ることで不幸」になるという訳になるのです。これまた「知るは喜びなり」という言葉の対極ともなるようです。学究タイプの廣石氏にとって、この「知ることの不幸」は、喜びにも通じることなのかも知れませんが?
 という訳で、私共住宅建築業者が良く目にする「見るだけですのでいいですか」といってご来場のお客様、アンケート記名を断りたいお客様に、今回のブログの締め括りとしてお伝えしたいことを最後に申し上げます。皆様方が、失敗しない家造りとして、知り得たことが「知るは喜びなり」となるように、着工前に情報収集はしたいものです。
 ぜひ、住宅の性能や施工の中身について、詳しい勉強を皆様方にして戴きたいものです。

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