携帯電話顛末書
物を失くして困ることと言えば、家の鍵、車の鍵、その次か、否、一番に来るのが携帯電話ではなかろうか。
以上の三点は何処かに繋がる鍵となっており、携帯電話は「人」と繋がる鍵である。
先日、小倉に出張の折、私はこの「人と繋がる鍵」を失くしてしまった。
娘に連絡をして、NTTに届けを出し、通話をストップしたり、日本航空や新幹線等に連絡をしてもらった。
当日は某企業の創業記念パーティーだったが、「気もそぞろ」とはあの時のことを言うのであろう、正に「狼狽(うろた)え」てしまった。
面倒が飛び火した家族からは遠慮のない「批判」と、このどうしようもないボケ老人対策として、様々なアドバイスが寄せられた。少しご紹介しておこう。
①携帯電話に紐をつけ首からぶら下げておく。
②携帯電話から離れると、警報が鳴る機器をセットする。
③携帯電話をやめてポケットベルを復活、会社で行動を管理する。
④早めに引退し、迷惑を防止する。
といったところである。
その翌日、新幹線の窓口に行き、もしやと、問い合わせて見た。
「色は金色」「それなら、博多に一台届けられている」とのこと。助かった。
丸一日振りに手にした携帯電話は、いつもより手にしっくりと馴染み、懐かしく、この世との繋がりを取り戻したかのようであった。人との繋がりを失うことは正にあの世に行くことであり、それを疑似体験したようである。
次の日、ホテルで朝食を採っていると、一人の紳士が近くにやって来た。
やおらポケットから何かを取り出し、空席のテーブルに。
「ここは私の場所です。」と物が置かれた。見ると、それは携帯電話。
ここは日本。だから失せ物は出る。場所も取れる。
この世との繋がりを果たす「鍵」の携帯電話をもっと大切に取り扱いましょう。
ちなみに、現在、私に第2の案が適用され、私が携帯電話から10m以上離れると非常ベルが鳴り、特に身内等身近な方にご迷惑をおかけしないようにと、絶対の対策を講じられている。
それでもスイッチを切って、そのことを忘れると、全ての対策は無駄となり、こちらには対策はムリということで、第4の対策もそろそろ検討されはじめたようである。
桑原、桑原。