東京の下町は親しみやすいにぎやかな風情で小さな間口の店が軒を並べていた。しかし、よく見ると3分の1がシャッターを降ろしており、都会にも過疎は忍び寄っているようだった。
日が落ちて、街の明かりが際立って来ると、小さな間口の店がよく見える。昼間、外が明るければ見えない所までが、夜になるとくっきりと室内燈に照らし出されていた。
バスが渋滞でしばらく停車しているので、ふと窓外に目をやると一軒のお店が、まるでそこだけが昔の温かな裸電球の黄色っぽい光に満たされた、特別な空間のように、目に飛び込んで来た。
中に小さな生き物が2匹動いている。一頭はグレイのコッカ―スパニエル。低いソファーにあぐらをかいていた。
手前には赤い上着を着せられた白いトイプードルが作業する婦人の方を眺めている。それは小さなブティックだった。頼まれものを裁断し縫い合わせている様子。きっと熟練の職人に違いない。
働くこと、技術をセンスを形にして、作り上げる楽しみを知っている人だろう。この婦人にとって働くということは、裁縫をするという事は喜びに違いない。
小さな7畳程の部屋に1人と2匹のワンチャンが、温かな時間を過ごしている。この、明々と照らし出された光景は、まるで熱帯魚の水槽が照明に照らし出されたように街中に輝いていた。
幸せな時間は輝いている。人は働くことが好きで、自らの丹誠が物を造り出す喜びに輝いているように見えた。犬たちもこの充実した時間を共有していた。
張り切って働く婦人の姿を2匹のワンチャン達は素敵に感じていた。
「お母さん、貴方の丹誠したワンピース、今度の日曜日お客様が卒園式に着てゆくものでしょう。楽しみだな、試着したお客様の笑顔見えるようだな」(トイプードル)
「お母さん、お母さんの働く姿、ボクは大好きです」(コッカ―スパニエル)
「働き方改革は、自分で決める。そうですよねお母さん」(私)