かつて寒い冬、最高のおもてなしは、「火の近くにお寄り下さい」というものでした。寒い冬、自らは温かな囲炉裏の炎から遠い所にいながら客人を囲炉裏端にいざなう。客人は火の温もりを有難く受け取りながら大切にもてなされていることに感謝の思いが湧いてくる。この寒い冬を乗り切る為に、家人が秋口から木を切り、割って貯えた貴重な薪を惜しげもなく、一本一本囲炉裏にくべながら交わされる会話は温かく燃える炎に照らされながらお互いの思いやりに満ちていたことでしょう。
今日では暖房機器の発達によって、ボタン一つで快適が得られるようになりました。北海道では各家庭に大型の石油タンクがあり、大量の灯油が消費されています。その結果、全室が温かく保たれることで、冬場のヒートショックで倒れる人が、温暖な宮崎に比べて格段に少ないという事実はあまり知られてはいないようです。
さて、先頃、宮崎市小松台で年末の忘年会をされていた年配の男性数人が一酸化炭素中毒で全員死亡する事件がありました。炭火で焼物を楽しみながら寒い年の暮、友情を温められていた所、気密性の高い住まいの中で酸素不足からこうした事故となったのでした。
昔の家では、室内で薪を燃やしても酸素不足にならない程、通気性の高い、言い方を変えればスカスカの室内空間でしたので、このような事故は起きなかったのです。
とは言え、開放型石油ファンストーブをご利用の方も多いことだと思います。
ところで、お客様方に居住されている室内の空気の汚れをお知らせする為、簡易なCO₂測定器を用意して、貸し出したことがありました。
国の安全基準は、空気中のCO₂濃度が1000㏙以内であれば健康に良いというものですが、一般的に寝室で目覚めた時のCO₂濃度は3000㏙を越えているのが現状のようです。結果に驚かれた方が、住まいのありように大切な知見を得られ、これからの家造りの指針に「住まいの空気質」というポイントを加えて戴ければとの思いから始めたことでした。
或日、営業社員が寄ってきて、報告したことによると、彼はその測定器を自宅に持ち帰り、テレビの上に置き、ワンチャンを抱っこしてソファーに座っていたとのこと。ふと立ち上がり測定器を見ると、なんと「5000㏙」と表示があったとのこと。結果、直に「石油ファンストーブ」は室内から追放されたのでした。
ちなみに、CO₂濃度が3000㏙以上の環境に長時間晒されると、健康被害が出ると言われています。外気を取り込むため、窓の開閉があれば、又、換気扇等により通気が取れていれば、このような数字は出なかったはずです。
ほんの少しの間、ストーブに点火し、テレビの番組に目をやった後に、アッという間に5000㏙なのです。
空気の汚染はCO₂ばかりではなく、PM2.5級の油煙も大量にストーブから吐き出されていることでしょう。知るまでは平気でも、知ってしまうと恐くてファンストーブは使えなくなったということです。
地球のCO₂濃度は年々上昇している。地球温暖化の原因とも言われているが、美しい自然の中にある東京都小笠原村南鳥島において、2009年の年平均値389.7㏙が今年は400.5㏙を越えたとのこと。
これからの家づくりは、人にとって、自らも、そうして人類の為にも環境にやさしい家造りを目指さなければならない時代になっているようです。
断熱性能を上げて省エネを実現し、創エネ(太陽光発電やエコウィル等)により、エネルギーを自給出来るような家造りがこれからの家造りの指標となるようです。