利便と鍵一本で確保されたプライベート空間。終(つい)の栖(すみか)でひっそりと暮らしたい。人の一生、住宅双六(すごろく)あがりのストーリーだ。最後はマンションで鍵一本の暮らしということ。
日常を彩る景色は俯瞰(ふかん)する街と空。ここで生まれた子供達は、鳥類のように中空で暮すことに慣れ、高所平気症となり、翼のない毎日から逃れ出るため、広い公園が大好きだ。解き放たれた野鳥のように飛ぶように公園を走る。
気が付けば大人達もより遠くより広く、非日常を味わえる旅好きな渡り鳥のように生活観察者となる。
マンション生活のことをこう言っては言いすぎなのかも知れないが、しかし。
地上に暮らすと足音、風の音、草木の花の香りを身近にすることとなる。視覚より聴覚、嗅覚、触覚から得る情報が多く、さりげない日常に季節の訪れを知ることとなるが、秋は金木犀の香りとともに、草に鳴く虫の音に深まる秋を感じることとなる。
マンションの高層階にそれがあるだろうか。