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大 の 字

                           大 の 字 
 畳の部屋がだんだん見られなくなった。
「大の字」と聞いてイメージされる、畳の上に寝ころがって大きく手足を投げ出した、あの気分。即ち、「大の字の気分」であり、それが即ち「大の字」となる。まるで「大の字」独特の連想ゲームなのである。
 畳には春夏秋冬の季節感がよく似合う。
一茶の句に「大の字に寝て涼しさや淋しさや」とある。いつもこの頃になると思い出す。
 又、今日の住まいでは私達は、大の字ではなく、両手は少なくとも少し閉じて暮らしているようで、大の字は何か体操でもしない限りこの手足を思い切り広げることはないような気がしてしまう。
大の字はやっぱり畳とセットで落ち着くようだ。
 昔、家の裏に砂浜があり、夜釣りに行った折など、その砂浜に寝ころがっていると、天上の星々がキラキラと輝いて、正に、降るがごとき一面の銀河と向かい合ったものだ。この時、両手両足を大きく広げて、天に比べてみれば小さな小さな「大の字」となって、しっかりバランスが取れていたような気がする。
両手両足を広げた解放感は心を軽くしてくれる魔法なのかもしれない。
 今の子供達は「大の字」って何のこと?と思っているかもしれません。

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