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パンジーの花が満開

          パンジーの花が満開 
 2月の寒い日に植えたパンジーが満開となった。
植えた者は開いた花に目が行く。
 昔、活け花は女性の嗜みであった。土曜日ともなれば数多(あまた)の女性が活け花教室に通った。
東京山手線のホームに置かれたごみ箱に数多の花が捨てられるようになって程無く、活け花は女性の嗜みではなくなったようだ。
女性達はホームのごみ箱に花材を捨てると、さっそうとデートに出掛けたという訳で、「ものの哀れ」という日本的な情緒もそのころから忘れられる運命にあったようだ。
 津波に壊滅した三陸の地で、年配の女性が孫娘の誕生記念に植えた梅の幼木を、今はもう全てが津波に押し流された家の敷地に見い出す様がテレビで放映されていた。
生きていれば、いつの日か春を告げる満開の花をつけた梅を見たであろう孫娘の為に、必ず復興させこの梅の花を守るのだと女性は語った。
女性は孫娘の母であった自らの娘も同時に喪っていた。
 私事ではあるが、先日二女が30週目で子供を死産した。
手も足もきちんと形が出来ており、髪も伸びて揉上げも立派な男の子だった。小さな棺に入れられて花に埋もれるようにして眠っていた。棺の内側の四面に二女と婿殿そうしてその他の家族の写真が並べられた。
 私共から見ると、まだまだ若い夫婦は子供のように見えてしまうが、やはり二人は立派な親だった。
なぜなら、美しい海や山、野原の写真が添えられていた。
「いっぱい色んなところに連れて行ってあげたかった。」と言う。
こちらは不幸の中にも幸せな光景を目に残してくれた。
 一方、三陸の海に消えた数多の人々の消息は未だに不明だ。
手向けの花さえもままならない日々が続いている。
どうか平穏な日々、花を愛でることの出来る良き日が、三陸の地に一日も早く来ることを願わずにはおられない。

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