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トイレ殺人事件立件

 犯行は完璧だった。計画は自然で誰からも見破られぬものとして実行されたのだった。
 現場は室内から施錠されており、誰かが犯行後、意図的に犯行を隠蔽(いんぺい)するために施錠したのではないようだった。被害者自身によって、かつて、新築時にインテリアコーディネーターと吟味した洒落たミッキーマウスのシルエットがデザインされた扉はしっかりとロックされていたのだった。被害者は用を足す途中だったようで、下半身に身にまとうものがなく残念な最後が突然に訪れた様子だった。
 被害者は老後、歩行が困難だった為補助金を用いて取り付けられた手スリが丁度腰かけた胸の前に遮断器のように横たわっており、その手スリにもたれかかるようにして絶命していたのだった。

 発見者は第一容疑者?

 発見者は偶然その家の維持管理業務で訪れたM工務店の社長と社長の長男で、10年程前にその家の設計施工を担当した専務であった。
 日頃からメンテナンス業務に熱心なM工務店では、引渡後も定期的に住宅の維持管理サポートを行っており、当日は数日前に訪問を約してあったとのこと。気軽に声掛けを行って、立ち寄ることも度々であったとか。訪問時には室内で飼われていた犬が異様な声で吠えていた為、施錠されていなかったドアから室内を覗いた所、トイレのドアを爪でガリガリと引き掻く忠犬の姿を目にし、あわてて工具を用いてドアを開いたとのこと。

 暖房便座はムダに終わった。

 発見時に哀れをとどめたのは、暖房便座で被害者は既に冷たくなっていたにもかかわらず、お尻だけを忠実に温めていたのだった。
 その日、1月10日は10年に一度という低温注意報が気象庁から発表されており、宮崎では稀な早朝マイナス3℃を記録していた。
 死亡した男性は当日1人で家にいたが、調べたところ、長女の嫁ぎ先で2世帯住宅の着工の地鎮祭があるとのことで、妻は子供の世話に借り出されていたとのこと。

 死因の特定

 毎年ヒートショック等の死亡者の数は厚生労働省の調べで、14,000人程度という。交通事故死は年間で4400人(2012年)ということで特に冬場に事故が多くなっている。
 よって、死因はヒートショック。遠因というべきか、法律用語では「未必の故意」という言葉があるが、Yahoo百科事典によれば、
「故意の一種で結末の発生が不確実であるが、発生することを容認した場合」のことを言う。
「断熱性能が低く、部屋別、パートタイム冷暖房の家では、ヒートショックで死亡事故が起こるかもしれない」と考えながら、家を設計し、建設した工務店の専務、及び経営責任者は殺人という罪にまでは問われないのが一般的である。しかし、建築のプロとしてどうなのだろうか。建築物の生みの親として、道義的責任は問われないのだろうか。
 これからは、全館空調(マッハシステム工法)の家づくりによって、これを防がなければならない。これまでの工法によって、このような尊い犠牲者を量産しては業界の名折れというものだ。

 住宅教の栽によれば

  トステムの潮田会長「住は聖職なり」の名言に従えばM工務店の社長と専務並びに全国の住の聖職者たるべき工務店の社長様方、皆一同に事件の首謀者と言われ兼ねない。トイレ殺人事件の立件は以上の経緯によるものである。

 

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