その時ダックスは玄関に出迎えに来ていた。
主人はドアを開くと、その愛らしいミニチュアダックスが「いつものように」後ろ向きに、おすわりしている姿を見つけ、ゆっくりと靴を脱ぎ、頃合いを見て、サッと玄関の敷居に足を置いた。
後は、1匹と1人のダッシュ、居間に向けて突進だ。
ミニチュアくんは某企業の最高責任者の愛犬で、この玄関ダッシュレースを楽しみにしているのである。
私がミニチュアの父であり、私の妻がミニチュアの母であることを耳にして打ち明けられた話である。
尚、彼の人は夜、このミニチュア君と寝ているが、ドアを開けているとミニチュア君が彼の人の奥様の元へ出て行こうとするので出さないようにしていることも打ちあけて下さった。それでも知らぬ間にこっそり奥さまの所へいってしまうとか。
「エサを食べさせてくれる人と、そのエサを貢いでくる人を比べたら、私の元へ来るのが常識である」とミニチュア君の非常識を非難されていたが真にもってそのとおりである。よって、彼の人はドアを閉めるようにされたとのこと。ミニチュア君が、ドアを閉められ奥様の元へ駆け付けられないのは当然と言えよう。
尚、彼の人より、奥様を真の実力者として敬するミニチュア君の判断は断じて誤りであることを彼の人は重ねて主張されたのであった。
さて、同席してこれらの話を興味深く開いておられたY氏が心に残る話として動物好きだった父君の話をされた。
チャボやアヒル、とりわけワンちゃんが好きだった父君との暮し。チャボの卵を自らの手で孵化し可愛いいヒヨコを育てられた様。一サジ一サジ餌付けされて、ヒヨコをいつくしみそだてられたこと、短い話であったが、本当に良き思い出であるにちがいない。
「犬は頭がいいし、情があります」と話すと、次のような話をされた。
ある日、家の2階で父親はご近所の人と碁を打っておられた。あー、そのように時間がゆっくりと流れていた時代、犬は放し飼いで、気ままに家の周りで遊んでいた。そのワンチャンを車がひいて下半身の骨を砕いてしまった。その時、ワンチャンは苦しい中を家に戻り、2階まで階段を上がって父君のところで息絶えたとのこと。
以上が私が皆様にお伝えしたかった犬の話であります。
我が家にも今、3代目としてミニチュアが2匹同居しています。